安きにありて危うきを思え

2.5

       ———-aseeking

「憂患に生まれ、安楽に死す。」

これはただの言葉ではなく、
深い生存の真理を語っています。

こんな寓話を聞いたことがあるでしょう——

一匹のカエルを熱湯に入れると、驚いてすぐに飛び出します。
しかし、冷水に入れてゆっくりと温めると、
その変化に少しずつ慣れ、危機を感じることなく、
やがて力を失い、そのまま死んでしまうのです。

これが有名な「ゆでガエルの法則」です。

多くの人は、嵐の中で敗れるのではありません。
安逸の中で、静かに、そして確実に崩れていくのです。

安逸とは、甘く静かな罠。
意志を鈍らせ、鋭さを失わせ、
闘志を削ぎ、危機を覆い隠す。
人を気づかぬうちに、深い淵へと追い込んでいきます。

甘き世界は、英雄の墓場でもあるのです。

順風満帆のときこそ、もっとも油断してはならない

物事がうまくいっているとき、人はつい気を緩めてしまいます。

しかし、真に先を見通せる者は、順境の中でこそ自問します。
・もっと改善できることはないか?
・見落としているリスクはないか?
・明日、状況が一変したらどう対応する?
・次の一歩は、本当に準備できているか?

安きにありて危うきを思う。
それは決して悲観ではなく、備えを意味します。

備えある者は、嵐が来ても動じません。
備えなき者は、そよ風ひとつで迷ってしまうのです。

危機は敵ではなく、安逸こそが真の罠

成長とは、常に順風満帆とは限りません。
人生だって、いつも晴れとは限らない。

人を止めるもの——
それは困難そのものではなく、
「慣れた快適さ」が、挑戦をやめさせるのです。

危機や挑戦は、成長を促す触媒。
過度な安逸と停滞こそ、失敗の温床です。

だから、風雨を恐れる必要はありません。
本当に怖いのは、「備えのない心」
そして、「温水の中で麻痺しきった自分」です。

居安思危——それは賢者の本質

それは臆病ではありません。
冷静さです。

それは悲観ではありません。
未来を見る目なのです。

不安ではなく、
人生と真剣に向き合う姿勢の表れです。

青春は、嵐を恐れず進んでいく力を持ちます。
でも同時に、知恵と準備を欠いてはならない。

順境の中で力を蓄え、
風が吹く前に、すでに心構えを整えておく。

居安思危とは、生き抜くための土台となる力です。

それを持つ者は、時代に置き去りにされない。
運命という「温水」の中で、沈みゆくこともない。

願わくば、
安逸の中でも目を覚ましていられるように。
順境の中で、静かに力を蓄えていけますように。
温水のカエルにはならず、常に嵐を見据え、
乗り越えられる人でありますように。

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