——人間性を知らない善良さは、生存の落とし穴になる
Be a Kind Person—with Thorns: Blind Morality Is a Survival Trap
私たちは幼いころから、「やさしくしなさい」「正直でいなさい」「人に親切にしなさい」と教えられてきました。
それは確かに、美しく、価値ある道徳心です。
でも——
それしか知らずに、人間の“本性”に目を向けないままだと、現実の社会では危険なのです。
まるで「私はいい人です」と書かれた札をぶら下げて、ハイエナの群れに足を踏み入れるようなもの。
そう、生存リスクが一気に跳ね上がるのです。
01|人間の“初期設定”とは?:生き延びたい、そしてより良く生きたい
人間の最も根源的な本能は、驚くほどシンプルです。
それは——「利益を求め、損を避ける(=損得勘定)」ということ。
この本能は、動物が餌を探し、巣を作り、天敵から身を守るのと同じレベルで、私たちにも深く刻まれています。
たとえば原始時代の部族。
食料が少なく、みんなが飢えていたら、どうなるでしょう?
もし全員が自分のことしか考えずに獲物を奪い合ったら——
強い者が弱者を押しのけて生き残るかもしれませんが、部族そのものが崩壊してしまう可能性も高いのです。
だからこそ、人は「協力」や「分かち合い」というルールをつくり、道徳が生まれました。
02|“道徳”は、人間の本性を制御するための知恵
道徳とは、聖人君子の説教ではありません。
むしろそれは、原始の人々が焚き火の周りで交わした“生存の約束”のようなものです。
•他人の獲物を盗まない(=誠実)
•大きな獲物はみんなで分け合う(=互助)
•無意味な争いは避ける(=平和)
こうした「共存のルール」は、個々の“暴走する利己心”に手綱をつけ、集団全体の繁栄を守る知恵だったのです。
でも——
この「道徳」だけを盲目的に信じて、“人間の本性”に目を向けなければ?
そこに、落とし穴が待っています。
03|善人がハマりがちな「道徳のワナ」
◆ 小林くんの例:
彼は、真面目で思いやりがあり、同僚にアイデアも時間も惜しみなく分け与えていました。
「きっといいことが返ってくるはず」と信じて。
ところが、頼ってきた“親しげな同僚”アキラに、資料や提案をすべてパクられ、手柄を横取りされた挙句、逆に「盗作した」とまで言われてしまったのです。
小林くんは、「僕は間違ってないのに…」と呆然。
道徳的には正しい。
でも、現実では完敗。
なぜなら——彼は、
人は利益の前では豹変することがある、という“現実の顔”を見ていなかったのです。
04|「いい人」が損をする典型パターン
•「高配当」をうたう投資話に騙され、貯金が消える(相手の“欲”を見抜けない)
•職場で地道に頑張っても、成果を奪われ、報われない(自己防衛しない)
•「友達だから…」と何度もお金を貸し、結果的に自分の生活が破綻する(線引きができない)
つまり——
“人間性を知らない善良さ”は、他人に都合よく利用されるスキマになってしまうのです。
05|では、どうするべきか?——「トゲのある善良さ」が生き残る
善良さを捨てる必要はありません。でも、“清く正しく”だけでは、通用しない時代です。
だからこそ、賢く、強く、そしてしなやかな「道徳力」が必要なのです。
。善良さについて、【善意が通じないのはなぜ?与える優しさが誤解される理由と関係改善のヒント】の記事をご覧ください
①川の流れを見極める:人間は基本的に自分本位
人間は状況次第で利己的になります。驚かず、責めず、まずはそういうものだと理解しましょう。
②自分の堤防を築く:境界線を明確にする
時間・お金・エネルギー・成果…どこまでが「貸せる範囲」か、はっきり線を引くことが、自分を守る第一歩。
③水面の波紋を読む:言葉より“行動”を観察
口では「応援してるよ」と言いながら、実際は手助けしない人、本当に信じる価値があるでしょうか?
④道徳を“道具”として使う:手段であって目的ではない
道徳は、人との信頼を築く“ツール”です。
助けたい人を選び、自分を守れる範囲で優しさを使いましょう。
⑤鉄筋コンクリートの壁を持とう:法律・契約・証拠で守る
道理ではなく「証拠」がものをいう世界。
契約書、記録、証言など、“ハードな防衛”も現代の「知恵」です。
06|やさしさに“トゲ”を添える、それが現代のサバイバル
やさしさは、美徳です。
でも、それが“無防備”であればあるほど、あなた自身を消耗させてしまいます。
だからこそ——
「トゲのある花」になりましょう。
それは冷たさではなく、自己尊重の証。
•無理な頼まれごとには「NO」と言う
•手柄は自分で守る
•助ける相手は、自分が納得できる人だけ
こうした知恵と“トゲ”をもつことで、あなたの善意は誰かを照らす光になり、決して利用されるだけの明かりにはなりません。
✦ 最後にひとこと:
やさしさは、選ぶものです。
そして、自分を守れる人だけが、真に他人を助けられる。
だから、
「いい人」であることをやめる必要はありません。
ただ、“賢い刺”をもつことを、忘れないでください。



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