95%の投資家は「自分が知らないことを知らない」ことに敗れている

株式市場で自信過剰な投資家が「愚昧の山」に立ち、少数の賢者が「開悟の坂」を登る様子を描いたイラスト 魂と意識の成長
自分が知らないことを知らない投資家たちの認知ピラミッド

95% of Investors Lose Because They Don’t Know What They Don’t Know

あなたの周りにも、こんな人はいませんか?
自信満々で株式市場に飛び込み、「次のストップ高を掴む!」と意気込むものの、結局は相場に叩きのめされてしまう人。

私の友人・アベイ(Abay)もその一人でした。
2015年の株式バブルの時期、彼は「噂」と「話題株」だけを頼りに投資を行い、口座残高を一時的に倍にしました。すっかり有頂天になった彼は、こう豪語していました。
「株なんて簡単さ。安く買って高く売ればいいだけだろ。」

彼は、自分が「何も知らない」ということすら知らなかったのです。
そして暴落が訪れ、利益は消え、本業の資金まで失いました。
その時、彼はようやく痛感しました。
「俺、本当に投資のこと何もわかってなかったんだ……。」

スマートフォンを手にしながら株価下落に落胆し、頭を押さえて苦悩する中年男性の投資家
株式暴落で損失を抱え、頭を抱えるアベイの姿

アベイの物語は、まさに市場にいる95%の個人投資家の縮図です。
獵豹移動のCEO・傅盛(フー・ション)氏が提示した「人間の認知4段階モデル」は、投資の最大の敵が市場ではなく“自分自身”であることを鋭く示しています。

古代ギリシャのデルフォイ神殿の格言「汝自身を知れ」。
それこそ、現代の投資家にとっても最も重要な修行なのです。


1.95%の人が囚われている「愚かさの山」

この認知モデルは、まるで一つのピラミッドのようです。

第1層(95%):自分が知らないことを知らない

―「愚昧の頂

井の中の蛙のように、見える世界がすべてだと思い込む。
感情と直感で取引し、衝動的に売買を繰り返す。
最も多いのが、この「カモ投資家」層です。

第2層(4%):自分が知らないことを知っている

―「絶望の谷

損失を経験し、「市場は自分の想像を超えている」と気づいたとき、人はこの谷に落ちます。
苦しいけれど、こここそが知恵の芽が出る場所です。

第3層(0.9%):自分が知っていることを知っている

―「悟りの坂

バフェットやマンガーのような投資家は学びを重ね、自分の「能力の輪」を築く。
すべきこと、すべきでないことを明確に理解しています。

第4層(0.1%):自分が知っていることを無意識に使える

―「達人の境地

判断はもはや反射のようで、まるで庖丁人が自然に牛をさばくように、無駄がありません。


2.なぜ私たちは第1段階にとどまりやすいのか

―「群衆の催眠

多くの人が感じるでしょう。
「普段は謙虚なつもりなのに、なぜ株を始めると急に傲慢になるのだろう?」

その理由は、株式市場が典型的な“群衆の場”だからです。

社会学者グスタフ・ル・ボンは『群衆心理』でこう指摘しました。
「人は群衆の中に入ると、理性が失われ、感情が支配する。」

市場という巨大な群衆の中で、私たちは簡単に感染します。
排他的になり、極端になり、感情的に流される。
それはまるで仮面舞踏会のようです。
人々は“群衆の感情”という仮面をかぶり、熱狂のダンスに身を委ねる。
一人のときは冷静でも、一歩市場のホールに足を踏み入れれば、
轟くニュースと噂という音楽に包まれ、すぐに“自分を見失う”のです。

群衆心理」について、別記事で詳しく紹介しています。→【「脳にダメージを受けたリーダー魚」になるな!


3.自分を欺く心理

― 認知の「地雷原

群衆の中で理性が曇ると、脳内の「認知の欠陥」が次々と爆発します。
マンガー氏はこれを「人間誤判断心理学」と呼び、徹底的に分析しました。

  • 過剰な自信:少し儲かっただけで「自分は天才だ」と思い込む。
  • 貪欲と嫉妬:他人の成功に焦り、自分の判断を見失う。
  • ストーリー思考:「次のGAFA」「時代を変える」という物語に酔い、企業価値の分析を怠る。
  • 保有効果と損失回避:いわゆる“塩漬け株”。損切りできないのは、「売る=負けを認める」行為だからです。

マンガーは警告します。
最も重要なのは、自分を欺かないこと。
そして忘れてはいけない――あなたこそ、最も自分を欺きやすい存在なのだ。


4.「悟りの坂」を登るための3つの方法

問題を自覚することが、解決の第一歩です。
では、どうすれば“愚昧の山”から抜け出せるのか――その鍵は次の3つです。

(1)視点を変える ― 逆向きに考える

・「みんなが買っているから良い株だ」と考えるのではなく、
・「みんなが同じ方向を向いているとき、たいていは間違っている」(ハンフリー・ニール)

市場が熱狂しているときこそ恐れ、市場が悲観しているときこそ勇気を持つ。

(2)視野を広げる ― システムで捉える

短期の株価は天気のように読めません。
しかし長期的には企業価値へと収束します。
短期の地図で長期の航海をしてはいけません。

(3)自分を整える ― 「チェックリスト」を作る

マンガーが指摘した心理的落とし穴(貪欲・群衆・アンカリングなど)を
自分用のチェックリストに落とし込みましょう。
取引前にパイロットのように確認するのです。
「今の自分は、どの罠にはまりかけていないか?」


結びに

投資の本質は、市場との戦いではなく、自分との戦いです。
「愚昧の頂」から「絶望の谷」に落ちることは、恐れる必要はありません。
それは“目覚めの始まり”だからです。

真に恐ろしいのは、永遠に95%の中にとどまり、
群衆と認知の罠に囚われていることに気づかないこと。

投資の成否は、市場を読む力ではなく、自分を知る深さで決まるのです。

彼を知り己を知れば百戦殆からず。
彼を知らずして己を知れば一勝一敗。
彼を知らず己も知らざれば、戦うたびに敗れる。

この千年の言葉こそ、今も市場で最も真実な教えです。
どうか私たちが皆、「自分が知らないことを知らない」という眠りから覚め、
険しくも光に満ちた“悟りの坂”を登っていけますように。

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