あなたの失敗は、足りていますか?

転機と内面の変化
霧の中で分かれる二つの道。 どちらが正解かは、歩き続けた者だけが知る。

Failure Is Not the Opposite of Success — It’s the Path to It.

ウォーレン・バフェットは、生涯で400〜500銘柄の株を買っています。
では、本当に彼に莫大な富をもたらした銘柄はいくつあったと思いますか?

10銘柄です。

それを聞いたチャーリー・マンガーは、さらに一言こう付け加えました。

「そのトップクラスの投資を除けば、バークシャーの長期成績は、実はごく普通だ」

つまり――
“投資の神様”と呼ばれるバフェットでさえ、90%の判断は平凡で、間違いで、時には損をしているということです。

それなのに、なぜ私たちは
「成功者は、最初から最後まで全部正解だった」
そんなふうに思い込んでしまうのでしょうか。

そして、なぜ私たちは
たった一度、二度の失敗で、自分そのものを疑ってしまうのでしょうか。

理由は単純です。
私たちは、彼らが“勝った瞬間”しか見ていないから。

成功者の人生を、まるでNGシーンをすべて削除したダイジェスト映画のように見ている。
ハイライトだけを残し、失敗のカットはすべて切り落としてしまっているのです。


一、本当に差を生むのは「正解率」ではない

ジョージ・ソロスの言葉で、私が何年も忘れられないものがあります。

「重要なのは、あなたが正しかったか間違っていたかではない。
正しかったときに、どれだけ稼げたか。
間違ったときに、どれだけ損をしたかだ」

ここに、高手と普通の人の決定的な違いがあります。

彼らの“間違える確率”は、あなたと大差ない。
むしろ、試行回数が多い分、失敗はもっと多いかもしれません。

ただ一つ違うのは――
彼らのシステムは、失敗を許容しているという点です。

野球に例えるなら、
毎回ホームランを打つ必要はありません。
空振りしてもいい。見逃してもいい。

大事なのは、
本当に良い球が来た数少ない瞬間に、思い切り振り切って、そして当てること。

多くの人が苦しむ理由はここです。
「毎回正しくありたい」と思うあまり、
そもそもバットを振る勇気すら持てなくなってしまう。

あなたにも、心当たりはありませんか?

・文章を書いても、何度も書き直し、誤字一つが怖くて公開できない
・決断のたびに迷い続け、「完璧な答え」を探して動けない
・少し投資すると、毎日値動きを見て、儲かればすぐ売り、損すれば意地で持ち続ける

私たちは、「間違うこと」を恐れすぎています。

一度間違えると、「自分はダメだ」と思い、
二度続くと、「人生そのものが間違っているのでは」と思ってしまう。

でも、バフェットは400銘柄を買って、390回は外しています。
それでも彼が“股神”と呼ばれるのは――
10回当たったときに、大きく賭け、長く持ち、十分に稼いだから。

完璧じゃなくてもいい」を見つめ直したい方は、 【「完璧じゃなくてもいい」――一歩を踏み出した私が見た、新しい世界】もあわせてお読みください。


二、なぜ私たちは失敗を恐れるのか

霧の向こうは、まだ何も見えない。
だから人は、立ち止まってしまう。

昨年、ある起業家の話を聞き、強い衝撃を受けました。

彼は小林さん(仮名)。
越境ECで起業し、2018年、ある新商品に目をつけ、会社資金の80%を投入しました。

ところが、商品が海外に届いた直後、政策が急変。
貨物はすべて税関で止まり、
キャッシュフローは断絶し、チームは解散。
多額の借金だけが残りました。

彼はこう語っていました。

「毎日眠れなかった。
目を閉じると、倉庫に積まれたあの在庫が、山のようにのしかかってきた」

転機は、“損切りを決めた瞬間”でした。

在庫を救おうとするのをやめ、安値で手放し、わずかに資金を回収。
そして残ったお金で、もっと小さなことを始めました。

国内の小さな工場と、海外のショート動画販売をつなぐ仕事です。

「一発逆転」は狙わなかった。
毎日10社に声をかけ、9社に断られても気にしない。

3年後、彼の会社はニッチ分野の“隠れたトップ企業”になっていました。

私は彼に聞きました。

「あの失敗は、後の成功に役立ちましたか?」

彼はこう答えました。

「ものすごく役立った。
あれで分かったんです。
失敗は終わりじゃない。ルールを学び直す入り口なんだって。
前は“思い切れば勝てる”と思っていた。
今は、“負け方を知っている人間だけが勝てる”と分かる」

私たちが本当に恐れているのは、失敗そのものではありません。
失敗した後に襲ってくる“自己否定”です。

「自分は向いていないのでは」
「自分は愚かだったのでは」

でも、高手の思考は違います。
彼らはこう考えます。

「自分が間違った」のではなく、「この方法が間違っていた」だけ。
なら、別の方法で、もう一度やる。


三、「失敗できるシステム」を設計し直す

もしあなたが、
リスクを避け、常に「安全で正しい選択」ばかり求めているなら、
今日からこの3つをやってみてください。


1.「失敗」を「データ」と呼び直す

失敗したとき、こう自分に聞いてみてください。

「自分はなぜダメなのか?」ではなく、
「この世界は、何を教えてくれたのか?」

ゲームで道を間違えて敵にぶつかるのは、罰ではありません。
「この道は通れない」という情報をもらっただけです。


2.自分専用の「失敗予算」を持つ

お金、時間、エネルギーの一部を、
最初から“失敗するため”に確保してください。

例えば――
・毎月1万円、よく分からないが興味のあることに使う
・週3時間、役に立つか分からないスキルを学ぶ
「これは間違えるためのコスト。ゼロになってもいい」と決める。

不思議なことに、
失敗を許した瞬間、人は挑戦できるようになる。
そして、チャンスはたいてい、挑戦の中に隠れています。


3.「非対称なリターン」を狙う

どんなことでも、こう問いかけてください。

「失敗の損失を小さく、成功の見返りを大きくできないか?」

自分メディアをやりたいなら、
いきなり高価な機材を買い、仕事を辞める必要はありません。

スマホで撮る。
空いた時間に書く。

うまくいけば、少しずつ賭け金を増やせばいい。
ダメでも、失うものは小さい。
でも、当たれば、上限はとても高い。

高手は、
「毎回正しい」ことを目指さない。
「負けられて、勝つときは大きく勝つ」ことを設計します。


四、あなたの人生にも「10銘柄」がある

私たちは、一直線の道を探しがちです。
一歩も間違えず、成功へ向かう道を。

でも、現実の人生は、霧の中の登山のようなもの。
ほとんどの時間は、探し、迷い、遠回りをしている。
頂上に立てるのは、ほんの一瞬です。

もし今、失敗続きで落ち込んでいるなら、
バフェットの400銘柄を思い出してください。

彼の90%の判断は、あなたと大差ありません。

違いがあるとすれば、それは――
本当に大切な10回が来たとき、
賭ける資本と、勇気と、待ち続ける忍耐を持っていたかどうか。

だから、今日から自分に許可を出してください。
間違えていい。
むしろ、“安く間違える”ことをしに行こう。

やってみたいけど怖いプロジェクトに手を伸ばす。
批判されそうな意見を発信する。
自分には無理だと思っていた人に会いに行く。

失敗は、あなたの敵ではありません。
あなたの一部です。

あなたが立ち上がれるのは、
転ばなかったからではなく、
何度も転び、どう転べば大怪我しないかを知ったから。

最後に、チャーリー・マンガーの、もう一つの言葉を。

「もし、頻繁に間違えていないなら、
それは、あなたが十分なリスクを取っていない証拠だ」

人生に、完璧はいりません。
必要なのは――
ほんの数回、
十分に大きく、十分に重く、十分に長く続く“正解”。

そしてその正解は、
あなたが歩いてきた、すべての“間違い”の道の先にあります。

歩き続けてください。
あなたの「10銘柄目」は、次の角を曲がったところにあるかもしれません。

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