借りもの

魂と意識の成長
借りものの時間――父と息子が過ごす、最後の夕暮れ

Borrowed Life — Everything We Have Is Only Temporarily Ours.

電話が鳴ったとき、彼は鍋の中のお粥を、ゆっくりと匙でかき混ぜていた。

三時間が経っていた。米粒はすっかり煮崩れ、刻んだ青菜が表面に浮かび、細く裂いた豚肉が一筋、一筋と粥の中に散らばっている。

父はこれが好きだった。彼が作ると、父はいつも二杯食べた。

電話の向こうで、母の声が途切れ途切れに聞こえた。
まるで、とても遠いところから漂ってくるようだった。

「お父さん……検査で……末期だって……」

粥の器が手から滑り落ちた。

砕けた陶器の破片が床一面に飛び散り、温かい粥がタイルの上をゆっくりと流れていく。
そこに横たわった粥からは、最後の熱がかすかに立ちのぼっていた。

出かけようとしたとき、
「お粥!」
背後から妻の声がした。

彼は足元を見た。
まだエプロンを着けたままだった。
紐をほどき、玄関に放り投げた。


病室の扉は、半分だけ開いていた。

父はベッドの上半身を起こし、首を傾けて窓の外を見ていた。
街路樹の緑が、まぶしいほど鮮やかだった。
けれど父の顔色はひどく灰色だった。頬骨が浮き、目の周りは深く落ちくぼんでいる。
たった一週間、会わなかっただけなのに。

彼は病室の入口に立ったまま、喉が詰まるような気がした。

父が振り返った。
「来たのか」
「うん」
「お粥は?」
「お粥……こぼした」
父は小さく頷き、それ以上は何も聞かなかった。

視線が彼の腰のあたりに落ちる。
シャツには、まだ乾ききっていない米の汁が付いていた。

父はしばらくそれを見つめ、それからまた窓の外へ顔を向けた。

二人とも、何も言わなかった。

しばらくして、父がふいに口を開いた。
「家のことだが……」
声は乾いて、かすれていた。

「お前が好きなようにすればいい」
三か月前、彼は実家の古い家の主寝室を、書斎に改装したいと言った。

父は頑として認めなかった。
「家は俺のものだ。お前が決めることじゃない」

あの日、父は煙草を一本取り出し、口元まで持っていった。
けれど火はつけなかった。
やがて煙草を箱に戻し、乱暴にドアを閉めて出ていった。
それ以来、父は二度と家に食事をしに来なかった。

「俺は、あなたの家なんていらない」
彼は言った。
「お前が決めることじゃない」
父は目を閉じた。

長い沈黙のあと、ようやく言った。
「俺は……まだ、お粥が飲みたい」


翌日、彼はスマートフォンに入っていた仕事のグループをすべて退会した。

住宅ローン、リフォームローン、そして来月のクレジットカードの支払い。
合わせれば二万元を少し超える。

妻は返済口座の数字を見つめたまま、何も言わなかった。

長い沈黙のあと、ようやく尋ねた。
「本当に、いいの?」
「もう、そんなこと言ってられない」

妻はしばらく黙っていた。
そして立ち上がり、台所へ向かった。

冷蔵庫を開ける音。
閉める音。

やがて台所から、何かを刻む音が聞こえてきた。
一度。
また一度。

「保温ポット、持っていきなさい」
妻が言った。


その日から、妻は毎日スープを煮た。
豚足、鮒、鳩。
日替わりで。

彼が病院に着くころには、父はすでに眠っていることが多かった。
彼は保温ポットをベッド脇に置き、そこに座って待った。

陽の光が父の後頭部に落ちていた。
白髪が、あまりにも白く見えた。
以前は、こんな髪ではなかったはずなのに。

ある日、父が目を覚まし、彼を見るなり、ふいに言った。
「お前が子どものころ、熱を出しただろ。俺もこうして座ってた」
「いつの話だよ」
「四十年前だ」

父が手を伸ばした。
彼の頭を撫でようとしたのだろう。

けれど手は途中まで上がったところで、ゆっくりと落ちた。
「もう、届かないな」
父の口元が、ほんの少し動いた。


三週目になると、父は痛みに苦しむようになった。

モルヒネは一日二回から四回になり、やがて四回でも痛みを抑えられなくなった。

その夜、父は身体を丸めるようにして苦しんでいた。

汗が枕を濡らし、唇には噛みしめた跡が二本の血痕になって残っていた。

彼は病室を飛び出し、看護師を呼んだ。
看護師は父を一目見ると、首を横に振った。
「こういうものなんです。もう、どうすることもできません」
「どうすることもできないって、どういう意味ですか?」
「ご家族の方、少し落ち着いて――」

彼は振り返り、壁を拳で殴った。
壁の表面が一部崩れ、白い粉がさらさらと落ちた。
手の甲が裂け、一筋の血がゆっくりと滲み出た。

看護師は何も言わず、そのまま立ち去った。
彼は病室へ戻った。

父は、少し落ち着きを取り戻していた。
汗に濡れた顔。

それでも、その目は開いていた。
ずっと彼を見ていた。
「こっちへ来い」

彼はベッドの脇に腰を下ろした。
父は枕の下から、一冊の本を取り出した。

表紙はすっかり擦り切れて白くなっている。
診断を受けたその日から、父はそれを枕の下に置いていた。

毎晩、看護師に読んでもらっていた。
彼は、もっと早く気づくべきだった。

けれどあの頃の彼は、ずっと忙しかった。
休暇を取ること。
食事を作ること。
病室を手配すること。
人を頼って専門医を探すこと。

彼はいろいろなことをした。
ただ一つ、父に尋ねなかった。

なぜ毎晩、この本を読んでもらうのか。
本は、あるページで自然に開いた。
紙は黄ばんで、端は丸まっている。

一か所だけ、何度も指で撫でられたような跡があった。
その横に、万年筆で一行の文字が書かれていた。
父が若いころの、几帳面で力強い字だった。
「大いなる大地は、形を与えて我を載せ、
生をもって我を労し、
老いをもって我を憩わせ、
死をもって我を静める。」

その下に、小さな字でこう書かれていた。
「身体は借りものだ。使い終わったら返す。何をそんなに急ぐ?」

父は彼を見た。
「お前が子どものころ、ラジコンを壊したこと、覚えてるか?」

もちろん覚えていた。
赤いラジコンカーだった。

父が上海への出張から帰ってきたとき、彼のために買ってきてくれたものだ。
二日も経たないうちに、階段から落としてしまった。
車体は真っ二つに割れた。

その夜、彼はベランダに座って泣いていた。
父は出てきて、床に転がった残骸を見た。

それから、彼を見た。
何も言わなかった。

「どうして怒らなかったの?」
父の指が、ゆっくりと本のページをなぞった。
「あの車は、最初から俺のものじゃなかったんだ」
彼は、少し戸惑った。

「俺が金を払った。ただ一時的に、俺の手元に来ていただけだ」
父は少し間を置いた。
「じゃあ最後は、誰のものになる?」
「……誰のものでもない」
「百年後、あの車はどこにある? 俺は? お前は?」

父が二度、咳をした。
喉の奥から、重い痰の音がした。

「みんな、ただ手を通り過ぎていくんだ」
父は息をついた。
「俺も、お前も、この病室も」
「借りものだ」
「でも、あなたは俺の父親だ」
彼は言った。

父は彼を見た。
「俺も、借りものなんだ」

父の呼吸が次第に速くなっていった。
一つ一つの言葉が、肺の奥から少しずつ押し出されるようだった。
「お前は俺の息子だから、永遠に俺のものだと思うか?」
「俺は、お前より何十年か先に来ただけだ」
「お前と少しのあいだ、一緒に歩いただけだ」
「駅に着いたら、お前は一人で歩いていく」
「だから、そんなに強く握りしめるな」

父の手がゆっくりと上がり、彼の固く握られた拳に触れた。
「手を開け」

彼は自分の手を見た。
爪が手のひらに食い込んでいた。
四つの三日月のような血の跡。
こんなにも長いあいだ握りしめていた。

けれど握っていたのは、ただ自分自身の肉だった。
彼は指を一本ずつ、ゆっくりと開いた。


翌日、父は驚くほど元気だった。

そして、家に帰りたいと言った。
医師は首を横に振った。
父は譲らなかった。

結局、担架に乗せられた父は、そのまま車へ運ばれた。
車窓の外で、街路樹が一本、また一本と後ろへ流れていく。
葉は少しずつ黄色くなっていた。

風が吹くたび、葉がかすかな音を立てて落ちていく。
父は窓辺にもたれ、長いことそれを見ていた。
「春になれば、芽が出る。秋になれば、落ちる」

父が言った。
「来年になれば、また芽が出る」

父は彼のほうを振り返った。
「木は、泣いたりしない」
「春から緑を少し借りて、時が来たら秋に返すだけだ」

少し間を置いて、父は言った。
「お前も同じだ」
「お前の力も、時間も、愛も」
「全部、借りものだ」
「だから、惜しまず使え」

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